『リスク工数を知っていますか?どうやって求めてますか?』リスク工数を求めてトラブルを回避するポイント!
プロジェクト計画では、予め作業工数を算出して万全に備えます。
ところで、作業工数の内訳とは何でしょうか?
『作業工数=開発工数+リスク回避工数』
リスク回避工数とは、リスクを見つけたときに問題に発展しないように事前に手を打つための作業工数です。
プロジェクトは、予期せぬ出来事の連続であり、リスク回避工数を盛り込むことをお薦めします。
リスク回避工数は、過去のプロジェクトで起こった問題事象と、それに関わった工数のデータを持っていれば推計できます。
しかし、データを持っていなければ、ある程度の指標や尺度を社内の有識者で検討して、共通的なリスク回避工数の算出方法を作りしかありません。
意外にも、このことをやっていないPMが多いって、ご存知でしょうか?
■今回のテーマ
プロジェクト計画における『工数の算出』の検討の中で、『リスク回避工数を盛り込まなかった』ことにより、『リスク回避の予測が出来ず作業が停滞する』という問題が起こりました。
この問題を取り上げて、原因の追求、解決策、リスク対策を解説していきます。
※プロジェクト検証の結果をお伝えするにあたり、架空の企業である「株式会社XYZ」での出来事として紹介します。
prologue
【プロジェクト状況】
現在のプロジェクトは、製造/単体テスト工程である。
当該工程の所要期間を50%消化した時点で、未確定の仕様が多く作業が停止したことから、プロマネ初心者の佐藤は『未確定部分をスコープ対象外にしたい』を依頼した。
しかし、クライアント窓口の木村の回答は『未確定部分をスコープから排除したら、ビジネスに悪影響が出る、当初の計画通り進めて欲しい』と要望された。
プロマネの佐藤は、状況の把握をしていますが、具体的な問題が分かっていない。
そのため、PMOの私へサポートを求めてきた。
(以降のSTEP1-STEP4はPMOが実施した)
STEP1:問題の設定
今回の問題は、プロジェクトで起きた事象を、様々なプロジェクト情報を元に考えたところ、『コストマネジメントエリア』で起こっている問題として取り扱うことにした。
そして、『リスク回避の予測が出来ず作業が停滞する』、このように問題を設定した。
STEP2:原因の究明
この問題は、スケジュール目標であるリリース日を逸脱している。
そこでPMOの私は、原因の仮説を立て検証を行った。
【原因の仮説】
(1)未確定の仕様を失念していた
(2)計画した開発工数が間違っている
(3)リスク回避工数の見積もりが誤っている
結果は、以下の通りとなった。
【仮説の検証】
(仮説1)未確定の仕様を失念していた
▷未確定の仕様に関して課題管理表に残されていたか?
➡︎YES
(仮説2)計画した開発工数が間違っている
▷有識者の開発工数も計画と同じであったか?
➡︎YES
(仮説3)リスク回避工数の見積もりが誤っている
▷有識者のリスク回避工数の見積もりも計画と同じであったか?
➡︎NO
問題の根本的な原因は、『仮説3』と判明した。また、プロマネ初心者の佐藤は、開発工数を算出したもののリスク回避工数を付加せず、作業工数として扱っていたことが分かった。
STEP3:解決策
この問題を放置することは、デスマーチプロジェクトの危険があるため、PMOの私は解決策を3つ考え、プロジェクトオーナーの山田と協議した。
【解決策の候補】解決策A:
未確定の仕様をスコープ対象外としてプロジェクトを進める。
解決策B:
クリティカルパスに影響する未確定の仕様を早急に決めて、プログラム製造を再開する。
解決策C:
全て要件を再度確認してから、作業を再開しスケジュールの延期を行う。
調査の結果から、開発工数を算出したもののリスク回避工数を付加せず、作業工数として扱っていたことが分かっている。
その状況をプロジェクトオーナーの山田へ説明し、山田の意向を踏まえ解決策を決定した。
【採用した解決策と採用の根拠】
山田の意向は、 クリティカルパスに影響する未確定の仕様を製造対象にすることに問題はないとの見解であった。
しかし、リリース日の延期は避けて欲しいとの要望があり、『解決策B』を採用した。
【解決策の実行に伴うダメージ】
また、今回の解決策を実施したことで、ITベンダーとクライアントに未確定の仕様を決める作業による工数が30%超過した。
今回の問題における原因は、リスク回避工数の見積もりが誤っていたということである。
今後、このような事態を避けるために、以下を教訓とした。
【教訓】
(1)プロジェクト計画で作業工数の中にリスク回避工数を含める。
(2)プロジェクト計画でリスク回避工数を正確に算出して、有識者のレビューを受ける。
STEP4:リスク管理表の作成
最後に、今回プロジェクトで起こった問題を課題問題整理表に記述し、今後のプロジェクトの教訓として役立てるためにリスク管理表に記述した。
このリスク管理表は、ITベンダーのプロジェクト情報として保管され、他チームへの情報共有として利用することになった。
最後まで、読んで頂き有難うございました。
今後の貴方のプロジェクト活動の参考になれば幸いです。
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