DX時代に役立つプロジェクトマネジメント

🔸プロコンサルティング🔸(株)ベイカレントコンサルティングの元パートナー🔸(株)タイムチケットの元取締役🔸DX時代に適応するためリスキリングしているPM・PM初心者へ実用的なプロジェクトマネジメント情報を配信中🔸

『スコープの合意を甘く見てるな!』悲惨なプロジェクトの始まり!PMなら押さえておきたい教訓!

クライアントとのスコープの合意を曖昧にして、放置するとデスマーチプロジェクトの危険があります。

f:id:yuro-1969:20200210093720p:plain

✅スコープ合意条件を決めるのを失念しがちな方

✅PJリスクを集めているPMやPMO
プロマネ初心者を抱える管理者
 
にお伝えしたいプロジェクトリスクの情報です。

プロジェクト計画において、スコープを明確にするには、『クライアントとの合意』が必要です。
『合意したつもり』、『合意していないけど、後で合意する』、このように安易に考え放置した結果、プロジェクトが炎上しデスマーチになるケースも多いものです。
これを避けるには、プロジェクトの計画段階で『スコープの合意条件』を決めておくことです。 
意外にも、これができていないPMが多いって、ご存知でしょうか?

■今回のテーマ
プロジェクト計画における『スコープの明確化』の検討の中で、『クライアントとスコープの合意をしなかった』ことにより、『スコープの合意なしにプロジェクトを進行させる』という問題が起こりました。
この問題を取り上げて、原因の追求、解決策、リスク対策を解説していきます。
※プロジェクト検証の結果をお伝えするにあたり、架空の企業である「株式会社XYZ」での出来事として紹介します。

 

 

 prologue

株式会社XYZは、市場シェアの拡大と業務コストの削減のために、新規プロジェクトを立ち上げることになました。
プロジェクトの目的として、売上の10%増加と業務コストの20%削減を掲げています。 目的を達成させるためには、個々の目標の設定が必要です。
品質目標は、レスポンスタイム、受け入れ合格に数値目標を設定しました。
コスト目標は、開発費用を1800万円以内として、スケジュール目標は、リリース日を10月1日、主要なマイルストーンをユーザーテストによる品質判断としています。
また、プロジェクトの開始は、4月1日。開発期間を6ヶ月としました。

【プロジェクトの登場人物】
▷山田
株式会社XYZの事業部長であり、プロジェクトオーナー。▷木村株式会社XYZの社内調整役。クライアント窓口であり、ITベンダーとコミュニケーションを取る。
▷佐藤
このプロジェクトの開発を担当する株式会社ABCのプロジェクトマネージャーであり、今回初めてプロジェクトマネージメントを行うプロマネ初心者。
▷PMアドバイザー
The manager's Barに所属。プロマネ初心者の佐藤のマネジメントアドバイザー。

【プロジェクト状況】
現在のプロジェクトは、結合テスト工程である。当該工程の所要期間を10%消化した時点で、クライアント窓口の木村から『”一部の要件が確定していない”という課題が未解決だが、要望通りのシステムができているのか?』と指摘された。
そのため、PMOの私へサポートを求めてきた。
(以降のSTEP1-STEP4はPMOが実施した)
 
  目次

STEP1:問題の設定

今回の問題は、プロジェクトで起きた事象を、様々なプロジェクト情報を元に考えたところ、『スコープマネジメントエリア』で起こっている問題として取り扱うことにした。
そして、『スコープの合意なしにプロジェクトを進行させる』、このように問題を設定した。

f:id:yuro-1969:20200207151517p:plain
STEP2:原因の究明

この問題は、品質目標である要望達成率100%を逸脱している。
そこでPMOの私は、原因の仮説を立て検証を行った。
 
【原因の仮説】
(1)仕様に関する不明点がQA管理されていない
(2)設計書の修正がされていない
(3)スコープの確定日程と確定条件の取り決めがない
 

結果は、以下の通りとなった。

【仮説の検証】
(仮説1)仕様に関する不明点がQA管理されていない
▷QA管理表で解答未記入があったか?
➡︎YES
 
(仮説2)設計書の修正がされていない
▷設計書の変更履歴が正確に更新されていたか?
➡︎YES
 
(仮説3)スコープの確定日程と確定条件の取り決めがない
▷プロジェクト計画書に「スコープ確定の条件等」が整理され記載されていたか?
➡︎NO
 
問題の根本的な原因は、『仮説3』と判明した。
また、正確に要件を理解していない範囲を調査したところ、一部のクリティカルな要件であることが分かった。

f:id:yuro-1969:20200207151816p:plain

STEP3:解決策

この問題を放置することは、デスマーチプロジェクトの危険があるため、PMOの私は解決策を3つ考え、プロジェクトオーナーの山田と協議した。

 

【解決策の候補】

解決策A:
要件が確定している範囲のみをスコープ対象とする。
 
解決策B:
要件定義のゴールを設定し、クリティカル部分のみ要件を再定義する。
 
解決策C:
要件定義のゴールを設定し、全ての要件を再定義する。
 
調査の結果から、正確に要件を理解していない範囲を調査したところ、一部のクリティカルな要件であることが分かっている。
その状況をプロジェクトオーナーの山田へ説明し、山田の意向を踏まえ解決策を決定した。
 

【採用した解決策と採用の根拠】

山田の意向は、要件定義のゴールを設定し、クリティカル部分のみ要件を再定義することに問題はないとの見解であった。
しかし、リリース日の延期は避けて欲しいとの要望があり、『解決策B』を採用した。
 

【解決策の実行に伴うダメージ】

また、今回の解決策を実施したことで、クライアントとITベンダーに再要件定義レビューに対する工数が30%超過した。
今回の問題における原因は、スコープの確定日程と確定条件の取り決めがなかったことである。
今後、このような事態を避けるために、以下を教訓とした。
 
【教訓】
(1)プロジェクト計画でスコープ確定のスケジュールと条件を決める。
(2)プロジェクト計画でスコープ確定となる条件成立をマイルストーンとする。

f:id:yuro-1969:20200207152204p:plain

STEP4:リスク管理表の作成

最後に、今回プロジェクトで起こった問題を課題問題整理表に記述し、今後のプロジェクトの教訓として役立てるためにリスク管理表に記述した。

このリスク管理表は、ITベンダーのプロジェクト情報として保管され、他チームへの情報共有として利用することになった。

f:id:yuro-1969:20200207152247p:plain


最後まで、読んで頂き有難うございました。

今後の貴方のプロジェクト活動の参考になれば幸いです。

 

このトラブルプロジェクトは私が対応しました!

www.abmtraining.net