『暗黙の了解が招いたプロジェクトの失敗』PMが品質管理で必ずやるべき対策!
PMであれば、メンバが品質基準を正確に理解しているかを把握する仕組みが必要です。
■今回のテーマ
プロジェクト計画における『コミュニケーションマネジメント計画』の検討の中で、『メンバが品質基準を理解しているかの仕組みを作らなかった』ことにより、『プロジェクトが停滞した』という問題が起こりました。
この問題を取り上げ、現役PMOが検証して教訓をお伝えしていきます。
※プロジェクト検証の結果をお伝えするにあたり、架空の企業である「株式会社XYZ」での出来事として紹介します。
参考:このような方にもお役に立つ記事となっています。✅品質基準のアナウンス方法を模索している方✅CTO、プロジェクト責任者の方
1,000以上のプロジェクトに携わった現役PMOがトラブルプロジェクトを検証した結果をご覧ください。
prologue
【プロジェクト概要】
株式会社XYZは、市場シェアの拡大と業務コストの削減のために、新規プロジェクトを立ち上げることになりました。
プロジェクトの目的として、売上の10%増加と業務コストの20%削減を掲げています。
目的を達成させるためには、個々の目標の設定が必要です。
品質目標は、レスポンスタイム、受け入れ合格に数値目標を設定しました。
コスト目標は、開発費用を1800万円以内として、スケジュール目標は、リリース日を10月1日、主要なマイルストーンをユーザーテストによる品質判断としています。
また、プロジェクトの開始は、4月1日。
開発期間を6ヶ月としました。
【プロジェクトの登場人物】
【プロジェクト状況】
現在のプロジェクトは、製造・単体テスト工程である。
当該工程が所要期間の50%を消化した時点で、設計書に曖昧な記述が多いため、製造者は経験から想像してプログラミングと単体テストを実施していた。
しかし、テスト結果が設計者の意図に反していることから、テストの不合格が多発し、設計者と製造者が険悪な関係になって作業が進まない。
そこで、プロマネ初心者の佐藤は『追加した仕様の対応を運用フェーズで実施すること』を依頼した。
しかし、クライアント窓口の木村の解答は『我々は要件を追加していない。メンバ同士の険悪な関係は、貴社の責任であり我々には関係ない。当初の計画通り進めて欲しい』と要望された。
プロマネの佐藤は、状況の把握をしているが、具体的な問題が分からず打つ手もなかった。
そこで、PMOの私へサポートを求めてきた。
(以降のSTEP1-STEP4はPMOが実施した)
STEP1:問題の設定
今回の問題は、プロジェクトで起きた事象を、様々なプロジェクト情報を元に考えたところ、『コミュニケーションマネジメントエリア』で起こっている問題として取り扱うことにした。
そして、『設計者と製造者の意思疎通の欠如によるスケジュール遅延』、このように問題を設定した。
STEP2:原因の究明
この問題は、品質目標である要望達成率100%を逸脱、スケジュール目標であるリリース日を逸脱している。
そこでPMOの私は、原因の仮説を立て検証を行った。
【原因の仮説】
(1)製造工程における必要なスキルが間違っている
(2)製造メンバーは製造工程における必要スキルを持っていない
(3)詳細設計が合格基準に達していない
そして、仮説に対して調査を行い検証した。
【仮説の検証】
(仮説1)製造工程における必要なスキルが間違っている
▷有識者が確認したスキルも同じであったか?
➡︎YES
(仮説2)製造メンバーは製造工程における必要スキルを持っていない
▷メンバーは製造を実施する上で十分なスキルがあったか?
➡︎YES
(仮説3)詳細設計が合格基準に達していない
▷設計者が品質基準を理解していたか?
➡︎NO
【特定された原因】
問題の根本的な原因は、『仮説3』と判明した。
また、プロマネ初心者の佐藤は、スケジュールの遅れを取り戻すために、詳細設計工程で設計の抜け漏れ、曖昧な記述があったことを理解していたが、製造、単体テスト工程で設計者と製造者が協力して、自分たちで対応してくれると考えていたことが分かった。
STEP3:解決策
この問題を放置することは、デスマーチプロジェクトの危険があるため、PMOの私は解決策を3つ考え、プロジェクトオーナーの山田と協議した。
【解決策の候補】
解決策A:
全ての設計書に対して不具合、曖昧な部分を修正してから、プロジェクトを再開する。
解決策B:
クリティカルな範囲に対して、設計者が製造者へマンツーマンで説明するタスクを設ける。
解決策C:
クリティカルな範囲に対して、設計者が製造者へマンツーマンで説明するタスクを設け、スケジュールを延期する。
調査の結果から、設計不備を把握しながらメンバーに対応を指示しなかったことが分かっている。
その状況をプロジェクトオーナーの山田へ説明し、山田の意向を踏まえ解決策を決定した。
【採用した解決策と採用の根拠】
【解決策の実行に伴うダメージ】
また、今回の解決策を実施したことで、設計者が製造者へレクチャすることによる工数が30%超過した。
今回の問題における原因は、調査したメンバーのスキルが不足していたということである。
今後、このような事態を避けるために、以下を教訓とした。
【プロジェクトを終えての教訓】
STEP4:リスク管理表の作成
最後に、今回プロジェクトで起こった問題を課題問題整理表に記述し、今後のプロジェクトの教訓として役立てるためにリスク管理表に記述した。
このリスク管理表は、ITベンダーのプロジェクト情報として保管され、他チームへの情報共有として利用することになった。
最後まで、読んで頂き有難うございました。
今後の貴方のプロジェクト活動の参考になれば幸いです。